補題1
次の完全列の可換図式
が誘導する列KerbibcKercicdKerdは完全である.
証明
図式を以下のような完全列の図式に分解する.
このときそれぞれの図式に対して以下を示せばよい.
- 0→Kere→Kerc→Kerdは完全である.
- Kerb→Kereは全射である.
以下のように実際の分解を行なえばよい.
E:=ImIBC,E′:=ImIBC′と定義する. これは分解された図式の射eを誘導する.
実際CoimIBCの普遍性により, ある射CoimIBC→CoimIBC′が誘導され, それを像に移したものがeとなる. 証明はImIBC′の単射性による.
このようにして構成したeに対して, IBE≅CoimIBC,IBE′≅CoimIBC′は全射であり, IEC≅ImIBC,IEC′≅ImIBC′は単射になる.
このとき分解された図式は完全になっている. したがってeはうまく定義されている.
以下のような可換図式を考える. (図式が可換であることは誘導の定義による.)
このとき
Kericd≅Imiec(1より)≅Kere(iecの単射性より)≅Imibe(2より)≅Coimibe≅Coimiec∘ibe(iecの単射性より)≅Coimibc(図式の可換性より)≅Imibc
となる. 従って完全性が示された.
1について
iecは単射である.
任意のf,gに対して, iec∘f=iec∘gとする.
このとき
Kerc∘iec∘fIEC∘Kere∘f=Kerc∘iec∘g=IEC∘Kere∘g
により, IEC,Kereの単射性からf=g.
このときKer(Kerd∘icd)≅Kereとなることをチェックすればよい.
なぜなら, そうだとすると
Imiec≅Coimiec=CokerKeriec≅Coker0(iecの単射性より)≅Kere(0の余核はcodomainになる)≅Ker(Kerd∘icd)(仮定より)≅Kericd(Kerdの単射性より)
となり完全性が示されたことになる.
任意のobjectXをとり, 以下の図式が可換になったとする.
このとき自然にXCDが誘導される.
KerICD≅ImIEC(完全性より)≅CoimIEC≅E(IECの単射性より)
に注意すると, upto isomorphismで以下の可換図式が得られる.
IEC′∘e∘XCD=c∘IEC∘XCD=c∘Kerc∘Xc=0
なので, IEC′が単射であることに注意すると e∘XCD=0 となる. これとKereの普遍性によりXXeKereが誘導される.
これはiec∘Xe=Xcを満たす. 実際
Kerc∘iec∘Xe=IEC∘Kere∘Xe=IEC∘XCD(XeはKereの普遍性により得られた射であるので)=Kerc∘Xc
となり, Kercの単射性によりiec∘Xe=Xcとなる.
またこのような射は一意である. すなわちiec∘x=Xcとなる射xが存在したとするとXe=xとなる. 証明はiecの単射性による.
従ってKereはKer(Kerd∘icd)としての普遍性を持つ. よってKer(Kerd∘icd)≅Kereが示された.
2について
2.1
図式から誘導される射CokerbjbeCokereは同型となる. すなわち図式0→CokerbjbeCokere→0は完全である. なぜなら1の双対な主張により, 0≅Cokera→CokerbjbeCokere→0は完全となるからである. 1の双対な主張は1とほとんど平行に証明される.
2.2
以下の完全列の図式を考える.
KerIBE′≅ImIAB′に注意すると以下のような完全列の図式が考えられる.
これに対して1を適用することにより, 0→Ker0≅KerIBE′xImbibe′Imeが完全であることが判る. xの単射性より
Imx≅KerIBE′≅ImIAB′
となるが, 標準的な分解Imb∘IAB′ˉ=IAB′を考えることで
Imx≅ImIAB′=Im(Imb∘IAB′ˉ)≅ImIAB′ˉ
となる. これはAIAB′ˉImbibe′Imeの完全性を示している.
2.3
以下のような標準的な分解を通じて
新しい完全列の図式を得る.
図式が可換であること
b∘IABImb∘bˉ∘IAB=IAB′∘a=Imb∘IAB′ˉ∘a
よってImbの単射性より, bˉ∘IAB=IAB′ˉ∘a.
e∘IBEIme∘eˉ∘IBE=IBE′∘b=IBE′ˉ∘Imb∘bˉ=Ime∘ibe′∘bˉ(ibe′の定義より)
よってImeの単射性より, eˉ∘IBE=ibe′∘bˉ.
図式が完全列であること
aはもともと全射, bˉ,eˉは分解の仕方により全射となる. 可換性によりibe′も全射となる.
このときeˉ=Coker(Kere∘ibe)となることをチェックすればよい.
なぜなら, そうだとすると
Kere=Ker(Ime∘eˉ)≅Kereˉ=Ker(Coker(Kere∘ibe))=Im(Kere∘ibe)≅Imibe
となり全射性が示されたことになる.
任意のobjectXをとり, 以下の図式が可換になったとする.
このときCoimbの普遍性により, 射Xbが存在する.
同様にCoker(IAB′ˉ∘a)の普遍性により射XABaが存在する.
Im(IAB′ˉ∘a)≅Keribe′により, Coker(IAB′ˉ∘a)∘Keribe′=0となることに注意すると射yが誘導される.
このときupto isomorphismでXABa∘y∘eˉ=XEとなる. 実際
XABa∘y∘eˉ∘IBE=XABa∘y∘ibc′∘bˉ=Xb∘bˉ=XE∘IBE
IBEの全射性により, 主張が従う.
またこのような射は一意である. すなわちx∘eˉ=XEとなる射xが存在したとするとXABa∘y=xとなる. 証明はeˉの全射性による.
従ってImeはCoker(Kere∘ibe)としての普遍性を持つ. よってeˉ=Coker(Kere∘ibe)が示された.
補題2
次の完全列の可換図式
が誘導する列Cokera→Cokerb→Cokercは完全である.
証明
双対な主張と平行に進む.
主張
次の完全列の可換図式
に対して列 Kerb→Kerc→Kerd∂Cokerb→Cokerc→Cokerd は完全である.
ただし射∂は以下の図式を可換にするようにただひとつ定まる.
証明
KerIDE′の普遍性により誘導される射をf:C′→KerIDE′とする.
このとき補題1を2回用いることにより, 完全列の可換図式
を得る.
KerICD′∘c=Ker(KerIDE′∘f∘c)≅Kerf∘c
に注意する.
同様にCokerIAB′の普遍性により誘導される射をg:CokerIAB→Cとする.
このとき補題2を2回用いることにより, 完全列の可換図式
を得る. Coker(c∘g)≅Coker(c∘IBC)に注意する.
ここで以下の図式に注意する.
Kerd≅Imy(全射性より)≅Coimy=CokerKery≅CokerImx=CoimCokerx≅ImCokerx≅Cokerx
となり, さらにCokerxの普遍性により射v:Cokerx→Coker(c∘IBC)が存在して, 上の図式と可換になる.
同様に
Cokerb=Imz≅Kerw
となる. Kerwの普遍性から射∂:Cokerx→Kerwがあり, 射vと図式と可換になる.
yの全射性, zの単射性により∂は唯ひとつ存在することがわかる.
このとき列が完全であればよい. 補題1と2により以下の列が完全であることを示せばよい.
KercicdKerd∂CokerbKerd∂CokerbjbcCokerc
すなわちKer∂≅Imicd, Kerjbc≅Im∂を示せばよい.
Ker∂≅Ker(z∘∂)=Kervおよび, 下の図式によると
補題1より, Ker∂≅Imαであることがわかる.
加えて以下の図式により,
Imβ≅Kerγであることがわかる.
ここで, Ker(c∘Ker(ICD′∘c))の普遍性により誘導される射δが存在してβ=Ker(c∘Ker(ICD′∘c))∘δを満たす.
Imβ≅Kerγ≅Ker(KerICD′∘γ)≅Ker(c∘Ker(ICD′∘c))
であることに注意すると, Imδ≅Im(Ker(c∘Ker(ICD′∘c))∘δ)=Imβ≅Ker(c∘Ker(ICD′∘c))となり, δが全射であることがわかる.
以上の注意により,
Imicd=Im(y∘β)=Im(y∘Ker(c∘Ker(ICD′∘c))∘δ)≅Im(y∘Ker(c∘Ker(ICD′∘c)))=Im(Kerv∘α)≅Imα
となり, Ker∂≅Imicdが示された.
Kerjbc≅Im∂も双対な証明が成立するはずである.